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証券アナリストは取得する価値のある資格か?合格した人間が語る

オフィスのPCに移った円グラフと折れ線グラフ

金融系の資格としては有名な証券アナリスト。合格率こそ高いが、受験者のレベルが総じて高いため、実は試験に合格するのはそれなりに難しい。テキストを見ればわかるが、未経験からスタートすると、それなりの勉強量を求められる。

自身の身の回りに資格を持って活躍している人間がいればいいが、そうでない人にはいまいちピンとこない資格だろう。取得するまでにどれくらい努力する必要があるのか、取得した後のメリットはどの程度あるのか。給料は上がるのか。転職に有利なのか。

この疑問に100%答えるのは難しいが、将来金融系で頑張っていくにせよ、そうでないにせよ、持っていないよりは持っていた方がいい資格である。ただし、あまりに時間をかけて取る資格ではない。というのが、証券アナリストを持っていて、かつ、この資格とは全く畑違いの環境で働いている私の意見だ。興味があれば読んでいってほしい。

証券アナリスト資格の難易度

証券アナリスト試験の難易度を4つの軸で見てみよう。

題材の難易度

題材の難易度とは、扱う分野の難易度ということだ。証券アナリスト試験の題材の難易度は高い。少し勉強したことのある人ならわかるかもしれないが、証券アナリストの試験では少なからず金融工学の分野を扱うからだ。

金融工学とは、要は、数学や統計学を使って、少ないリスクで高いリターンを得るためにはどうしたらよいかを研究する学問だ。

証券アナリストの勉強をする以上、ある程度複雑な数式を見たり解いたりすることが求められるので、数学が苦手な人はテキストを見ただけで非常に難しそうだと感じるだろう。

逆に、理系出身で数学や統計学に強い人には、試験のレベルだとそこまで高度な数学力が求められるわけではないため、そんなに難しく感じないだろう。

ちなみに私は文系出身で、大学受験の時から数学にはアレルギーがあったため、テキストを開いても、最初はそこに書いてある数式の内容をさっぱり理解できなかった。

試験の難易度

証券アナリスト試験の合格率は高い。まずは日本証券アナリスト協会が提供しているデータを見てほしい。

受験者数 合格者数 合格率
2019年 2,596名 1,169名 45.0%
2018年 2,520名 1,241名 49.2%
2017年 2,414名 1,147名 47.5%
2016年 2,410名 1,159名 48.1%
2015年 2,339名 1,127名 48.2%

この表は、直近5年間の証券アナリスト試験第二次試験の合格率を表している。これを見るとわかる通り、45%~50%ほどの合格率で推移している。

皆さんはこの合格率を見て、どう思うだろうか。私は最初に見た時、「なんだ、余裕じゃなないですか!」と思った。けれど、実際勉強を始めてみると、「ちゃんとやれば余裕で受かる」という気持ちはすぐに消えた。

先ほども言った通り、勉強する題材難しい。試験の合格率だけ見ると簿記2級よりも簡単そうだが、全然そんなことはない。それに、上記の表は二次試験の結果だ。その前に、一次試験があって、一次試験で3科目(証券分析・市場分析・経済分析)に受からないと二次試験を受験することができない。

一次試験は全てマークシート方式で、試験の難易度はそこまで高くなく、ちゃんと勉強すれば受かる。ただし、3科目となると勉強しないといけない量が多い。これを3科目一気にとなると、結構ハードルが高いので、大抵の人は1個か2個ずつ受ける。こうやると、一次試験は半年に一回なので、最短でも一次試験合格までに1年かかってしまう。

二次試験は今度は全問筆記試験で、試験の難易度もぐっと上がるが、受験は年1回しかできない。頑張って一次試験3つに合格した人でも、半分以上は合格できないことになる。

加えて、合格者はアナリスト協会のHPに所属企業が公開されるが、この資格を取る人はみな、有名企業に在籍している。一番多いのは当然金融系だが、皆さんご存じの通り、金融系は学歴偏差値が高い人が多い傾向にある。

何が言いたいかというと、試験を受ける母数のレベルが結構高い試験だということだ。その中で、一次試験3科目に合格した人が半分以上落ちる試験、と言えば、それなりにちゃんと勉強しないと受からない試験、と認識した方がいいだろう。

要するお金

こちらも、先ほどの日本証券アナリスト協会のHPから抜粋。

第1次レベル講座
会員受講者 50,300円
一般受講者 56,500円
第2次レベル講座
一般受講者 53,500円

この表の通り、1次試験を受けるために、講座(教材)に申し込みを行う必要があり、それに50,000円強かかる。さらに、2次試験を受けるために、また講座(教材)に申し込みを行う必要があり、その際には別途50,000円強かかるということです。

つまり、試験を受ける資格を得るために、1次・2次合わせて教材費10万円を支払わないといけません。いい商売ですね。ちなみに一次の方に書いてある会員受講者というのは、所属する企業や団体が、日本証券アナリスト協会の会員になっている会社の所属者のことです。

ちなみにこの教材、私は一切見ませんでした。というか、当時の私には読んでも理解できませんでした。なので、本当に受験料という感じになります。会社が費用補助してくれる場合はいいですが、そうでない場合、個人にはちょっと痛い出費ですね。

私は独学で勉強したので、日本証券アナリスト協会のテキスト代意外にかかったお金は、1次試験の参考書6冊、2次試験の参考書2冊+受験料だけだったと思いますが、予備校や通信教育を考えている人は結構な費用感になるでしょう。

要する時間

勉強時間はその人の知識や地頭によって差がつくので一概には言えませんが、私の場合でいうと、こんな感じでした。

試験 勉強時間 一日の勉強時間
1次 証券分析 4週間弱 4時間
1次 経済 2週間 4時間
1次 市場分析 3週間 4時間
2次 8週間弱 4.5時間

一発合格までの勉強時間です。トータルで大体500時間といったところでしょうか。サラリーマンで、平日は毎日会社があったことを考えると、それなりにやっていた感がありますね。

私の場合、当時数学が本当に苦手で、そこのキャッチアップに物凄い時間を要しました。暗記系はかなり自信がありますが。理系の人や、文系でも数学や統計学が得意だった人にとっては大したことはないと思うので、自分よりもっと少ない時間で合格にたどり着けるかもしれません。

また、投資銀行や証券会社等で金融工学を実務で使っている人は、これよりも遥かに少ない学習時間で合格できるでしょう。

取った後のメリット

証券アナリストの資格取得の難易度について話してきました。今度は取ってからメリットについて話します。※あくまで私の場合です。参考程度に読んでみてください。

金融機関の場合

金融機関に務めている場合、この資格を持っているとそれなりに評価されます。証券会社や銀行員の場合、名刺に証券アナリストと入っていると、知的な印象を受けます。社内でも、難関資格を取ったということで、何らかの形で表彰され、報奨金も入ることでしょう。

中小の金融機関では、この資格を過去に取得している人がほとんどいないこともあり、取得すると周囲に対して大きなアドバンテージを得られるはずです。

ほかにも、例えば証券会社や、投資が絡む仕事に就職・転職する際にはアピールポイントにはなるでしょう。

ただし、投資銀行など、グローバルエリートの皆さんが集まるような環境では逆に、このくらいの資格を持っていても大して評価されないでしょう。完全に実力の世界になるからです。

金融機関以外の場合

私の場合、新卒で金融機関に入って証券アナリストを取得しました。その後、2度の転職活動を経て、今はコンサル会社で働いています。

それなりに難関資格なので、履歴書に書いておくと転職活動で役立つかなと思っていましたが、全く役に立たなかったというのが実態です。こんな話をしてしまうと、将来ずっと金融機関で働く気がない人は資格を取る気概が失せてしまうかもしれませんが、包み隠さず言うとそんなもんです。

そもそも、金融機関の外に出ると、証アナの資格について認知している人がほとんどいません。証券会社や銀行にいる人なら、持っていると、「証アナ持ってるんだ!」ってなるけど、そうでない人達の間の知名度はすごく低いです。難しいか簡単かも知らない資格を持っているって言われたって、ピンとこないですよね。

なので、私の場合は転職活動では一切この資格を持っていることでアドバンテージはなかったですし、コンサル会社で働いている今でも、資格を持っていることで人から評価されるということはありません。

将来的なメリット

今の話を総合すると、金融機関で食べていく場合は取って意味のある資格です。また、金融機関でなくとも、経理や財務の仕事をする上でも、金融工学に関する知見は役に立つでしょう。コンサル会社などで、金融機関に対しアドバイザリー業務を提供する際にも、持っていてメリットのある資格と言えるでしょう。

他方、私のように、キャリアを考える上では全くに役に立っていない場合、頑張って資格を取ることにあまり意味はないかもしれません。それよりも、もっと汎用的に役立つ資格や、語学に心血を注いだ方が将来のためになると思います。

労力とメリットを天秤にかけると

繰り返しになりますが、金融系で食べていく気持ちが固い人で迷っている人がいたら、「取って正解ですよ」と言います。他方、将来金融とは関係ないところでやっていくつもりの人には、「他のことを頑張った方がいいんじゃないですか?」って言います。前者の場合は頑張って勉強する価値あり、後者の場合は取得した効果が労力に見合わないと言えるでしょう。

ただ勿論、ありあまる時間をつまらないことに浪費するくらいなら、頑張って何かの資格を取ってみることは、有意義なことだと思います。私の場合は証券アナリストを取ってから別の道に行きましたが、資格を取ったことが、金融工学の知識を使う仕事に進む契機となった人もいるでしょう。