コスト削減

会社のコスト削減のアウトソーシングに関する考察

お金とノウハウの交換

会社のコストリダクションと言っても色々あるので、ここではよくある間接材のコスト削減(経費削減)を外注するケースについて述べたい

アウトソーシングすると、何を、どこまで、どういう費用体型でやってくれるのかを話した上で、最後に「誰に、何を」アウトソーシングするのか、しないのかが正解なのか。私の見解を述べたい

間接材コスト削減の外注先にはどんな会社があるか

間接材のコストリダクションを幅広く外注できる会社には、大きく分けて以下の3種類がある

  1. コンサルティングファーム:
    いわゆるBIG4と呼ばれる総合系のファームや、IT系ファームのアクセンチュアやIBMといった会社、その他の日経コンサルティングファームが該当。幅広いソリューションを展開している会社であれば、大体どのコンサルファームも間接材コストリダクションはサービスメニューに入ってるだろう。戦略コンサルはほとんどこの領域を扱わないが、ATカーニーは歴史的にこの分野に強い
  2. コスト削減サービスに特化した会社:
    本人たちはコンサルファームと名乗っているが、実態は決してコンサルとは言えない会社。なぜコンサルと言えないかというと、ある特定の分野に特化した極めて狭い範囲でしかクライアントの問題解決をできないから。多くの場合、コンサルタントに求められるロジカルシンキング、ファシリテーション、ドキュメンテーション、、、といったスキルをコンサルタントが身に着けていないから。実行支援まで含めた体を動かす部分でガンガン攻める会社が多い。個社名は控えるが、こういう会社は大小含めて日本に無数に存在する
  3. 個人:
    上記の①や②を退職した経験者が自分で企業したり個人事業主になっちゃうケース。初めに営業を頑張って実績を作り、あとは経営者からの紹介→紹介で顧客層を広げているケースが多い。②ほどプレーヤーの数は多くないと思われるが、営業力と専門知識さえあれば、かなり儲かる商売なので、新規で立ち上げる人も多い

何を、どこまでアウトソーシングできるのか

間接材のスコープとしては、コストが下がる品目であれば何でもやってくれる(出来なくてもやれますという)会社が大半

「どこまで」というのは会社によって差があって、まず①のコンサルティングファームは、多くの場合、コスト削減対象品目の可視化・削減見込の算出から削減実行の後方支援までを支援するケースが多い。ここでいう後方支援とは、新規サプライヤーからの情報収集や、既存サプライヤーと交渉する際の想定問答の作成、リダクション効果のP/Lインパクトの計算等である

②コスト削減サービスに特化した会社、③個人の場合、対象品目の可視化・削減見込みの算出も行い、さらにコスト削減実行のところまで代行してくれるケースが多い。いま「代行」と言ったが、本来外部の会社や個人が企業の交渉事を代行することはできないため、企業と派遣契約を結び、コスト削減の実行支援を行う会社の派遣社員の位置づけでサービスを提供するケースもある。(実態はどう見ても代行なのだが)

今話したところだけ切り取ると、最初から最後までやってくれるサービス特化型の会社や個人の方が優れていると思われるかもしれないが、彼らは基本的に成功報酬体系でしかビジネスをやっていないため、実際に支援してくれる品目が限定されること、コンサルティングファームのような精緻な品目毎の分析はしてくれず、分析しましたとか言って、下がりそうな品目だけ他社のベンチマーク事例と比較して、削減余地をA3ペラいちで持ってくるような会社もあることは補足しておく

費用はどれくらいかかるのか

費用は、固定報酬型と成功報酬型で違ってくる。簡単に説明すると、

  • 固定報酬型:
    支援にかかわるコンサルタントの、単価×時間で手数料が決まる。一般的に、会社の規模が大きければ大きいほど、間接材コストの規模も大きくなり、分析に手間がかかるため、大企業ほど費用は高くなる。ただし、固定報酬なので、下がる見込みのある品目については、かなり幅広く支援してくれる(多いと50~60品目)。コンサルティングファームは固定報酬の形態を取ることが多い
  • 成功報酬型:会社によってマチマチの部分もあるが、多くの場合、実績連動型で、削減額の1年分を手数料としている会社が一般的。コストが下がらなかった場合、依頼する企業側にはコストがかからないため、少なくとも金額面で見ればアウトソーシングするデメリットは固定報酬に比べると少ない。コンサルティングファームでも一部成功報酬型の手数料体系をサービスメニューに加えている会社も存在する

上を簡単にまとめると、固定報酬の場合はコスト削減が成功してもしなくても一律の料金、成功報酬の場合はコスト削減に失敗したら手数料0で、成功した場合は成果に応じて費用がかかってくる

これだけ見ると成功報酬の方がお得感があるように思えるかもしれないが、経験者からすると固定報酬の方が美味しい

まず第一に、間接材コスト削減にプロジェクトとして取り組めば、コストが一切下がらないということはない。第二に、成功報酬の一般的な相場の「1年分」というのはボッタだと感じる。1年分という手数料に根拠がないからだ。固定報酬の場合は人数×単価という根拠がある(人月単価がそもそも高いという指摘はいったん置いておくが、コンサルティングファームでは一応きちんとロジックを組んで人月単価を計算している)

例えば年間コストが2億円の品目のコストが20%下がるとする。

この場合、年間の削減金額は4,000万円、

つまり成功報酬は4,000万円ということだ。4,000万円あれば、固定報酬型のコンサルタントを高く見積もっても10人月フル稼働させることができる

私はこの分野について経験があるから言えるのだが、年間コスト2億円を20%下げて手数料4,000万円は手数料として明らかに高い。なぜなら、コストを下げるだけなら一人で1か月かければ十分にできてしまうからだ

それなら、10人にフル稼働してもらって、できるだけ幅広い品目に取り組む方が、コストインパクトが大きいのは自明だろう

会社が外注できるコスト削減費目の例

成功報酬型がメインの会社や個人では、売り上げを計上するために、まず短期間で簡単にコストが下がる品目に取り組みたがる

簡単に下がる品目とは、いわゆる総務系の品目である。総務系の品目は他社とのベンチマーク比較をするだけですぐに高いか安いかがわかるので、他社事例を背景にちょっとサプライーと交渉すれば、短期間で大きな削減効果が得られてしまう

具体的には、複合機・電気・警備・通信費・カーリース・印刷といった品目は、成功報酬型の会社が先ず一番最初に取組対象としてお勧めしてくる品目だ

一方、コンサルティングファームは、大小含めて出来るだけ多くの品目に取り組むことが多い。社内に何らかの識者がいることも多く、特化型の会社があまり取組たがらないような複雑な分析を要するコスト、具体的にはIT関連費用や、広告宣伝費、直接材の副資材に該当するような品目まで、幅広く分析してくれるだろう

サプライヤーマネジメントとユーザーマネジメント

重要なことを言い忘れたので補足しておくと、間接材コストを下げる手法は大きく分けて2種類ある。サプライヤーマネジメントとユーザーマネジメント

サプライヤーマネジメントとは、取引先と価格交渉することでコストを下げる手法だ。価格交渉の材料には、他社ベンチマーク、原価積算などがあり、これらを背景にロジックを組んで、サプライヤーにコストを下げてくださいと、交渉をすることになる

ユーザーマネジメントとは、品目の仕様や数量、発注ルール等を見直すことでコストを下げる手法だ。ユーザー(商品やサービスの買い手)が自分たちが調達するモノやサービスについて見直しを行うことで、非効率や無駄を見直すことができる

簡単に言えば、取引先に対して、頑張って価格を下げてくださいとお願いするのがサプライヤーマネジメントで、調達する側が頑張るのがユーザーマネジメントである

間接材コスト削減と言った時に、多くの場合、コスト削減サービスに特化した会社や個人に依頼するとサプライヤーマネジメントの視点でしか支援してくれないが(支援できない)、コンサルティングファームに委託すると両方の観点でコスト最適化の支援をしてくれる

もっとも、ユーザーマネジメントは企業自身にとっても負担を強いることになるため、実現するのは経営層まで一枚岩になって推進する必要があり、大幅なコストインパクトをもたらすのは簡単なことではない。経験上、サプライヤーに価格を下げてもらう方がよっぽど楽にコストは下がる

どうするのが正解なのか

私が考えるに、大企業はコンサルティングファームへ固定報酬で委託、中小企業は自社取組+総務系の費目以外を委託が正解だと思う(ただし、中小企業でも固定報酬型のサービスを受けられるのであれば、全部を固定報酬で委託した方がいい)

先ず、固定報酬と成功報酬のどっちがいいかについては、先ほど見解を述べた通りである。プロジェクト型で大々的にコスト削減に取り組めば、まず間違いなく元は短期間のうちに取れる

次に、なぜ大企業はコンサルティングファームに全部委託で、中小企業は総務系以外の費目を委託するのが正解と考えるのか

大企業の場合

大企業の場合、まず現状を可視化することに時間がかかる。可視化とは、間接材コスト全体を、コスト削減の対象に分類し「案件化」したうえで、案件となった品目毎にコスト削減見込を算出することである

総勘定元帳の勘定科目は、コスト削減の単位としては粒度が粗く、実際にコストを下げようと思ったら、サプライヤー単位の案件として勘定科目を更に細かく括り直す必要がある

売上高何兆円の大企業になると、G/Lデータだけでも百万行単位であったりする。これを分析するには相当な時間と人手、専門性が求められるということが一点、

加えて、大企業の場合、さすが大企業というだけあって、案件単位でみると代表的な品目のコストは既に結構安価な単価で契約していることも多い。そこからリダクション効果を最大化させるとなると、サプライヤーマネジメントだけでなく、ユーザーマネジメントの観点も加えてコスト削減に取り組む必要がある

ユーザーマネジメントを行う場合、具体的な業務と紐づけて分析を行う必要があり、こういう分析はサービス特化型の会社や個人では対応が難しい

他にも色々あるのだが、大企業の場合、より安価に効果を最大化しようとすれば、既に確保してある”コンサル予算”の中で、コンサルティングファームに固定報酬で委託するのがベストだと考える

言い忘れたが、大企業の場合、そもそもコンプラに厳しいため、サービス特化型の会社がやっているような「代行」はそもそも稟議が通らない可能性が高い。となると、コスト削減の実行自体は自社社員で取り組む必要があり、そうなったときに心強いのは、精緻な分析をしてくれて、資料も作りこんでくれるコンサルティングファームだろう

似たような事例を引っ張ってきてBM比較を行うだけの削減見込の算出では心もとないということだ。勿論、コンサルティングファーム以外が全てそういう適当な分析しかしていないとは言わないが、あくまで私の経験値から知りえる範囲からすると、その傾向が強いように思える

中小企業の場合

中小企業の場合、私の経験上、大企業に比べると、そもそも間接材コスト削減に過去にあまり取り組めていないことが多い

そうなると、先ほど話した総務系の品目などは、正しいやり方をすれば自社取組でも相当な効果が得られるはずだ。さっきの4,000万円の例で話したように、自分たちで取り組んでも結構下がるコストを、最初から外部委託するのは勿体ないというのが一点

二点目は、1年間の成功報酬を支払ったとしても、何もしないよりは削減に取り組んだ方が、来期以降のメリットが大きくなるため、マイナーだけどコストの大きな費目はプロに任せた方がいいという点。

手数料1年分は大きな金額だが、1年目は下がった分を手数料として支払うので、トントン、2年目以降は丸々自社のメリットになるので、何もしないなら委託した方がいいし、難易度の高い費目に取り組んでリダクションに成功しなくても、手数料を支払わなくて済む

ただし、実際にはサービス特化型の会社や個人も、自分たちが稼げる美味しい品目に取り組めないのであれば、工数だけかかって売り上げに繋がらないことも想定されるため、引き受けないかもしれない。(彼らはハイエナなので)

その場合、ちょっと嫌らしいけど、法人営業の人に餌をぶらさげて先ずはお試しで、、、とか言って、難度の高い品目に全力で取り組んでもらったうえで、自分たちでも出来そうな品目は結局外注しない、なんて戦法が考えられますかね。。。私が営業担当だったらかなり頭に来ると思いますが、、、笑

あと最後に一点だけ補足しておくと、中小企業の場合も固定報酬でやってくれるコンサルティングファームがあるなら、固定がいいと思います。トータルのコストメリットが大きくなるというのもそうですが、成功報酬型の場合、委託先がコスト削減の実行も代行してくれちゃう会社が多いですが、そうなるとコストは下がってもコスト削減の実務が組織に定着しないので

調達購買部門の差別化要素に、ストラテジックソーシングがありますが、企業が今後成長していくことを考えると、きちんと核になる人間がソーシングの実務を学んでおいた方がいいと考えるからです